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​『踊る日々紡ぐ日々』インタビュー

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来たる8月8日からはじまるのは、独創的な発想で数々のユニークな作品を作り上げてきたタップダンサー 村田正樹さんの公演『踊る日々 紡ぐ日々』。

5日間にわたるこの公演は、毎日、日替わりのゲストを迎え、それぞれちがう内容が楽しめるというもの。

ソロ公演も継続して行なっている村田さんだが、今回はなぜ、あえて共演者と作り上げることにこだわったのだろうか。そして、この公演には、どんな想いが込められているのだろう。リハーサル真っ只中の村田さんにお話しをうかがった。

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文/​内海織加

表現することにも、生活することにも、

人と関わり合うことにも、逃げずに向き合いたい。

ー今回の公演『踊る日々 紡ぐ日々』は、日替わりでゲストを迎えて作り上げるとのこと。今年の春には、ソロ公演を開催されていましたが、今回は、あえて一人ではなく共演者との公演にしようと思ったのはなぜですか?

 

ここ数年、僕の中にひとつのテーマがあるんですけど、それが「自分と他者との関係」なんです。人生って、たくさんの方と出会って、関係性を築いていくじゃないですか。そういう人との関係性によって、僕は存在しているなぁ、と思うようになったんですね。大げさかもしれませんけど(笑)

 

実は、人と関わることがあまり得意な方ではなくて。

もともと一番やりたかったパフォーマンスがソロでの表現なので、ソロ公演は続けているんですけど、共演者と作品を作り上げるっていうことを頻繁にはやっていなかったんですね。でも、数年前から、今回も出演してくれる藤田善宏さんと作品を作ってみたり、タップダンサーやミュージシャンと一緒にタップライブをやったり、他者と関わっていくことや一緒に作っていくことの〝おもしろさ〟みたいなものを感じるようになってきて。それで、今回は、自分以外の誰かと向き合って一緒に何かを作る、ということを自分発信できちんとやってみたいと思ったんです。

 

パフォーマンスに関してだけでなくて、日々出会ういろいろな人とちゃんと向き合うような生き方をしたい、っていう気持ちも根底にあるので、この公演を通して、そういう生き方にほんのちょっと近づける気がしたっていうのもあります。

ーなるほど、踊ることを通して、生きることに向き合うというか。そういう想いが『踊る日々 紡ぐ日々』というタイトルにも表れているのでしょうか?

 

そうですね。気づくと、毎日ダンスのことを考えている自分がいます。

それは、自分自身のダンスのクオリティやオリジナリティ、表現するという行為を突き詰めることでもあるんですけど、そういうときには、つい自分に足りないところばかりが目について苦しくなったり、自分のいいところをどうやったら伸ばせるだろうと前向きな思考になったり、それがどう自分の生き方や他の人の生き方や社会に影響するのかと、内なる自分との対話という感じです。

 

そういうことだけを考えているならいいのですが、やはり、生きている以上、生活のことやお金のことが頭をよぎることもあるわけで。ダンスでどうやって食べていったらいいんだろうとか、公演など表現に付随する金銭面をどうやって工面していこうとかを考えはじめると、そういうことで頭がいっぱいになってしまうこともありますね。

 

でも、どちらも自分にとってはダンスにまつわることであり、とても大切なことだと思っています。「踊る日々」というのは、そういう踊ることにまつわるさまざまな思考であったり、日々の中で感じることであったり、生きている実感みたいなものをイメージした言葉です。

 

そして、先程の話とも繋がってくるのですが、日々の中で関わっている人がいるっていうこと、そして、そういう人と繋がっていくことによって、人生は拡がっていくと思っていて。それは、僕自身もそうですし、きっと、周りにいるみなさんもそうだと思うんですね。人と人が出会って、紡がれていく。そういうイメージで「紡ぐ日々」という言葉を加えました。

共演者と創りあげる〝冒険〟のような日々。

スタッフも観客皆さんも巻き込んで、繋がってみたい。

ー今回の5日間の公演は、ゲストも内容も日替わりですよね。それぞれの共演者とリハーサルの真っ只中だと思いますが、それぞれの共演者と作り上げる過程の中で今感じていることや気づいたこと、各共演者についてあらためて思うことなどはありますか?

 

どの方とのリハーサルも楽しいですね! 笑いっぱなしです(笑)。打ち合わせやリハーサルをしていると、「なるほど、ここでこう考えるかー!」とか「うわーそんなアプローチもあるのね」とか「アイデア出す回転速度、早いなー!」とか、みなさんの表現欲や対応力に圧倒させられます。ダンス的にも音楽的にも、ビジュアル的なことも、とにかく多面的に刺激を受ける日々で、勉強になることが多いですね。

 

僕自身は、共演者のみなさんの期待を裏切らずに、予想は裏切る!みたいな意気込みでリハーサルに挑んでいます。こんなにもいろいろな表現者の価値観や想いに、一気に触れる機会はなかなかないので、本当に楽しくて幸せな毎日です。ちょっとだけパンクしそうになるときがありますけどね(笑)。

 

 

ーひとりでは味わえないおもしろさを存分に楽しんでいらっしゃる感じですね!

 

そうですね。ひとりで作るのも、共演者と一緒に作るのも、それぞれにおもしろさはあるなぁ、とあらためて感じています。

 

ひとりの場合は、とにかく自分の内側をえぐるような作業をしていく感じで、ぐーーーーーっと自分の深いところにある繊細な点を顕微鏡で覗き込んでみたり、その真逆に到底意味もないようなことにフォーカスを当てて自由に発想を膨らませてみたり。真逆のようなことのように見えて、僕の中では、一応ちゃんと一貫しているんですけど、まぁ、やりたい放題!っていう感じではありますね(笑)

 

それに対して、共演者と一緒に作るのは、気づきと発見の連続です。自分一人では、絶対にこうは思わないというところに思考が動いたり、思いもよらないところに着地したり。そういうのがたまらなくおもしろいですね。そのプロセスって、一緒に冒険している感覚に近いかもしれません。「あ!宝箱みっけ!」「竜宮城に辿り着いた!」「オアシス発見したー!」「レベル1上がったー!」って感じで。

 

誰かと一緒の場合は、その方の表現にきちんと寄り添いながら、自分の力を存分に発揮できるところを考えるんです。もちろん、それがスムーズにできるときと、模索するときもあるんですけど、その人の〝表現の海〟を泳いでみたくなるんですよね。もちろん、ぷかぷか浮いているだけではなくて、僕の海にも遊びに来てよっと言ってタップや自分らしい表現を出すべきところできちんと出すっていうことは意識しています。

ーどちらも村田さんの表現ではありますけど、そのプロセスは全くちがいますよね。今回は、それぞれの共演者の方と、こういうふうに表現したいとか、こういう方向を目指したいとか、そういうイメージはありますか?

 

5日間のステージを共にする共演者は一人ひとり個性豊かで、表現方法も表現する色彩も全然ちがいます。そういう全くちがう人たちだからこそ、それぞれのカラーや表現をきちんと共有したいと思っています。そうすることによって、この公演を終えたときに、共演者のみなさんの中にも、なにか新しいエネルギーが宿るんじゃないかと。そうだったらいいなぁ、と思うんですね。

 

今回は、共演者のみならず、裏方で関わってくださるスタッフのみなさんや、公演を観に来てくださるみなさんとも、いろんなものを共有したいと思っています。一人ひとりと、どこかでちゃんと繋がっている感覚を持ちたいんです。

 

演者と観客の垣根を壊していくような企画にしたいと、立ち上げの頃からずっと思っています。それは、まだまだ試行錯誤ではあるのですが、僕がこれから活動していく中で、最も大切にしたいと思っていることのひとつです。

 

 

ー観に来る方も、「観る」という一方的な行為というより、ステージと客席の間でのコミュニケーションだったり、エネルギーの交換みたいなことだったり、繋がりや関わり合いみたいなものを感じられそうですよね。

演者にとっても観客のみなさんにとっても、

次に繋がる〝点〟になることを願って。

ー今回、内容もゲストも日替わりということで、どの公演もとても楽しみなのですが、5日間それぞれのステージはどんな内容になりそうですか?

▪️8日 ゲスト:otogatari(タップ音楽劇)

 

もともと一緒にタップを踊っていた先輩がやっているタップ音楽劇のユニットです。今回は、その世界に僕もおじゃまします。絵本の世界を、朗読とタップと音楽で立体的に表現するのですが、タップダンスのいろいろな側面も楽しんでいただけると思います。例えば、音楽としてリズムを奏でたり、絵本の登場人物を演じたり、効果音として活躍したり。そういうタップダンスの素敵なところを感じてもらいつつ、物語を楽しんでいただきたいですね。ちょっと時間は遅いのですが、お子さんも楽しめる内容なので、ご家族で観にきていただきたいですね。夏休みですし!

▪️9日 ゲスト:樽木栄一郎さん(音楽)、近藤康平さん(絵)、チエミサラさん(灯り)

 

この日の共演者の共通項は、「旅」ですね。いろいろな土地の人と繋がりながら生まれる想いを、歌と絵とキャンドルとタップで表現したいと思っています。

樽木さんは、やさしい歌とリズミックなギター、そしてMCも全てが最高です。近藤さんのライブペインティングは、まるで映像をみているかのように刻々と移り変わるのですが、その生まれては消えていく儚さは、その瞬間の愛おしさも感じさせてくれます。チエミサラ さんの灯りは空間ばかりでなく、みなさんの日常をもあたたかく包み込んでくれると思います。音楽やアートがお好きな方にも観ていただきたい内容です。

▪️10日 ゲスト:河内大和さん(朗読)、田中象雨さん(書)、原口香英さん(打楽器)

 

この日は、5日間の中で最も大人な雰囲気のステージになるかもしれません。言葉とリズムが心の奥底の何かをえぐり取るような感じというか、観てくださる方の深_いところにアクセスするようなライブになるといいなと思っています。急遽、ベースとギターも加わることになりました。インスタレーションを体験するような気持ちで観に来ていただけたら嬉しいですね。

▪️11日 ゲスト:熊谷拓朗さん、石神ちあきさん(コンテンポラリーダンス)

 

身体表現に長けた、個性的なダンサーのお二人と一緒に、「ダンス」というものにとことん向き合います。僕自身も馴れないダンス?を一生懸命に踊ってみたりしています。ぎこちなさと違和感をあえて楽しんでください(笑)。お二人ならではの発想と柔軟性が、普段感じているのとは異なる独特の時間感覚を生み出しています。それを、ぜひみなさんにも体感していただきたいです。じんわりと心に残るような印象的な〝時間〟になると思います。

▪️12日 ゲスト:藤田義宏さん(コンテンポラリーダンス)

 

藤田さんとは、「ニヴァンテ」というユニットでご一緒させていただいていて、作品としては大人も子どもも楽しめるダンス劇をやっているのですが、今回は、僕が作っている紙芝居「鳴る靴くん」シリーズの新たなお話をやることになりました。ほっこり心があたたまるような新作です。僕が作った「鳴る靴くん」というキャラクターが、紙芝居という平面を飛び出してどんな物語を紡ぐのか、お楽しみに。そして、今回だけかもしれないので、お見逃しなく!あと、この日はスタート時間も15時と早いので、ぜひ、親子で観にきてください。

ー本当に、毎日がまったくちがう雰囲気の公演ですね!これは、複数公演観たくなります!最後に、このインタビューを読んでくださったみなさん、そして、『踊る日々 紡ぐ日々』を観てくださるみなさんへ、メッセージをお願いします!

 

僕にとっては、企画を立ち上げてから続いている〝日々〟の全てが、この公演『踊る日々 紡ぐ日々』。こうしてインタビューに答えている時間も、この公演の一部です。はじまりがあれば必ず終わりがありますが、それでもこの日々が僕にとって、共演者にとって、そして観てくださるみなさんにとっても、次に繋がる〝点〟となるような時間であり、そして新たな繋がりや出会いとなる公演にしたいと思っています。僕が大好きで尊敬する素晴らしいアーティストのみなさんにも、ぜひ会いに来てください。

僕は、タップダンスを思いっきり楽しみます。日常にリズムを。心にリズムを。

 

ーありがとうございました!タップダンサー 村田正樹と日替わりゲストによる5日間の公演『踊る日々 紡ぐ日々』は、8日8日(水)から12日(日)まで。お見逃しなく!

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